脳波(EEG)研究100周年──脳と心の未来をつなぐ次の100年に向けて
- Yuki Sakai
- 8月3日
- 読了時間: 3分

2024年、脳波(EEG)記録が人類史上初めて行われてからちょうど100年を迎えました。
この節目に、世界中の研究者・専門家たちが集まり、「これからEEGがどう進化し、私たちの暮らしや医療にどう関わっていくのか?」という未来予測を行いました。私たちXiberlincの代表・町澤まろも、その共著者として参加しています。
※ 論文掲載先:Nature Human Behaviour
この記事では、その論文のエッセンスを脳科学の専門家でない方へもわかりやすく、かみ砕いてお伝えします。
EEGってどんな技術?

EEG(Electroencephalography, 脳波計測)は、脳の活動をリアルタイムで捉える技術です。1924年、ドイツの精神科医ハンス・ベルガーが、世界で初めて人の脳から電気信号を記録しました。それが、EEG(Electroencephalography=脳波計測)の誕生でした。
装置を頭につけるだけで痛みもなく、私たちの「考えていること」や「感じていること」の手がかりを可視化できます。100年前に始まったこの技術は、今では睡眠障害の診断や、てんかんの発見など医療の現場で広く使われています。
EEGの100年──“脳を測る”という夢の始まり
この出来事は、それまで想像の世界だった「脳の働きをリアルタイムで見る」という夢に、科学が初めて触れた瞬間でした。
その後の100年で、EEGは数々の進化を遂げてきました:
医療分野での定着
睡眠障害の診断や、てんかんの早期発見、手術中の脳機能モニタリングなど、EEGは“脳を見る医療機器”として確かな地位を築きました。
認知機能の研究
記憶、注意、感情など、人の心の動きと脳の関係を探る研究にも欠かせないツールになりました。
技術の進化
かつては病院や研究室でしか使えなかったEEGも、今では軽量でポータブルなデバイスが登場し、一般の人々にも身近な存在になりつつあります。
EEGはこれまでの100年間で、「見えなかった心」を少しずつ“観察可能なもの”に変えてきました。そしてその旅路は、まだ始まったばかりです。
これからのEEGは、こんな未来を描いています
論文の中では、「EEGの未来」について、次のような期待が寄せられています:
誰もが使える身近なデバイスになる
スマートウォッチのように、脳の状態を日常的にチェックできるように。
AIが脳の情報を自動で解析
ストレス状態や集中力の波などを、リアルタイムでフィードバック。
病気の早期発見に役立つ
認知症や発達障害などの兆候を、初期段階で見つけて対処できるように。
教育や仕事の最適化にも活用 脳の“学びやすい状態”や“集中しやすいタイミング”を活かして、教育現場や職場環境が変わる可能性も。
ただし、「信頼される技術」にするために必要なこと
EEGが社会にしっかりと根づくためには、技術だけでなく、3つの大切な価値観が必要だと論文は強調しています。
正確さと再現性(Validity)
誰が測っても、どこで使っても同じように再現でき、信頼できるようにすること。
ひとりでも多くの人に開かれること(Democratization)
世界中、どんな地域の人でも平等にアクセスできる技術であること。
倫理と持続可能性への配慮(Responsibility)
脳の情報という“究極のプライバシー”を守ると同時に、環境にもやさしい方法で活用されること。
EEGのこれからに向けて、私たちができること
XiberlincではEEGの社会実装を目指して、脳のデータを活用したメンタルヘルス事業など、今後も更に研究開発を推し進めていきます。未来のEEGは、医療だけでなく、教育・福祉・働き方・創造性の領域にも広がり、私たちの生き方そのものをアップデートしてくれる存在になるかもしれません。
この論文は、未来の科学に向けた「タイムカプセル」です。今、私たちが何を大切にし、どんな行動を選ぶかが次の100年を決めていきます。
EEGとともに生きる未来に、今後もぜひご注目ください!